2004年春、私の思い: My Message 谷口多美江

今年の初めに、英国のある方より、「Keep up the good work.」(良い仕事をし続けなさい。)というメールを頂いた。それから、ずっと、「私にとって"Keep up the good work."とは、何だろう?」と考え続けている。
もちろん、「N.G.S.ジャパン」にとっての「グッド・ワーク」とは、「ガーデン・オープン・チャリティ(庭園福祉活動)」、「ガーデニング・トラディション(園芸奨励)」、「ガーデナー・トレーニング(ガーデナー育成)」、そして「ガーデン・コンサベーション(庭園保護保存)」という「N.G.S.ジャパン」の屋台骨である4本柱を固く信じ、そのために皆さんと共に走り続けることである。
しかし、「私にとって、私の生き方、私の人生を通して『精神のグッド・ワーク』とは、何だろうか?」このごろ、このことをいつも考えている。
昨年の12月、私は2週間ほど英国に行き、「ザ・ナショナル・ガーデンズ・スキーム」のニコラス・ペーン会長とベレル・エヴァンス事務局長にお目にかかり、「N.G.S.ジャパン」の4本柱である主目的と活動内容を詳しくお話し今後の活動に関してご相談にのって頂いた。
ご両人とも非常に好意的で、今後とも変わらぬ「N.G.S.ジャパン」への暖かな協力とより良い関係をお約束頂いた。このことは、「N.G.S.ジャパン」の将来にとって非常に心強く、素晴らしい英国からのメンタル・サポートで、心から感謝致したい。
更に現在は副総裁のひとりであられるダフネ・フォーシャム元会長のお宅の「ヴェール・エンド」でのクリスマスの為のディナー・パーティとお宅の近くにある古い教会での「クリスマス・キャロルの会」にご親切にお招き頂いた。
その日、私は、ダフネに教えて頂きながら、メイン・ディッシュのチキンクリームソテーなどのディナーの準備や「クリスマス・キャロルの会」のための沢山のミンス・パイ作りのお手伝いをした。そして、午後4時から約2時間、その古い教会で、地元の方々と「クリスマス・キャロル」を歌い、牧師さんからは「キリスト生誕」のお話しを伺った。
終了後にその教会の修復のための募金が行われ、教会の外では、ミンス・パイとニッキの入った熱い赤ワインをふーふー言わせながらみんなと共に頂き談笑しながら和やかな時を過ごした。
この「会」は、私にとって非常に貴重で英国ならではの経験になった。
しかし、私は、翌日、私のこれからの人生の精神面の礎になるであろうという感動的な出来事に直面した。それは、ダフネとご主人のジョンが、寒い朝に、又その教会に出向き、前日の「会」の後かたづけを自ら黙々とされていた光景である。
「人の見ていないところで最後の最後までやり通す、この姿こそ、『真のチャリティ精神』だと心から思い、この精神を常に決して忘れずに私は人生を歩まねばならぬ」と、肝に銘じ、帰国した。
中世ヨーロッパの「騎士道精神」から生まれたと言われる「ノブレス・オブリージュ(Noblesse Oblige)」は、私の生涯の大切な言葉である。それは、「高貴なる者は、勇気、仁愛、高潔という徳を積み、社会に貢献する責務がある。」という考え方であり、英国の高等教育の理念だとも言われている。
この「ノブレス・オブリージュ」こそが、チャリティの精神の核になるものではないだろうか?
ダフネ元会長こそ、「ザ・ナショナル・ガーデンズ・スキーム」の会長職を離れたとはいえ、生涯を通して様々な形で社会に貢献し続ける「ノブレス・オブリージュ」の象徴的な方だと思う。彼女は、私に多くの影響を与えて下さる大切な方であり心から敬愛している。
しかし、この「ノブレス・オブリージュ」とは、日々の日常生活の中でこそ培われるものであり、それほど難しい事ではない。日々、大人は、高貴な精神を目指し、社会の中で生きていく上で、善悪の判断の時「イエス・ノー」をはっきり言える「勇気」を持ち、相手に優しい気持ちと思いやり=「仁愛」、そして純粋で清らかな心=「高潔」という徳を重ね続け、大人の責任と義務として、「社会の中でどのように生きるべきか、社会に役立つことは何なのか」を常に考え行う事だと思う。そして、何よりも、未来を担う若者達へこの理念を継承する努力をし続けることである。
今の日本人は、キリスト教という」宗教のベースを持つ英国人と違って、なかなか、このチャリティ精神が根付きにくいと言われ、「自分が良ければ良い」という自己中心的な考えを持つ人がまだまだとても多いが、今こそ、日本も、この成熟した精神「ノブレス・オブリージュ」の理念の下、自分よりもまず先に相手の幸福を、そして「世界平和」を願う人間社会になることを心から希望する。
やはり、私にとって、生涯を通しての「Keep up the good work.(良い仕事をし続ける)」とは、この「ノブレス・オブリージュ」を目指し続けることだと確信している。だからこそ、より多くの方々と庭園を通し花々に囲まれながら「エレガント・ノブレス・オブリージュ」であるこの庭園福祉活動をし続けたいと願っている。この「Keep up the good work.」という言葉は、私を立ち止まらせ、これからの私の人生のあり方を深く考える時間を与えてくれた今年の英国からの大切な「言葉の贈り物」であった。